菅首相の施政方針演説に思う

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通常国会が開会した。開会は菅首相の施政方針演説で始まる。国の方針を示す演説であり注目が集まる。

演説の目玉は、国づくりの理念として「平成の開国」、「最少不幸社会の実現」、そして「不条理をただす政治」の三つを挙げた。

しかしこれだけでは、わかりにくい。国の進むべき方向が見えないように思う。

施政方針演説の中には、「現実を冷静に見つめ、内向きの姿勢や従来の固定観念から脱却する。そして、勢いを増すアジアの成長を我が国に取り込み、国際社会と繁栄を共にする新しい公式を見付け出す。また、社会構造の変化の中で、この国に暮らす幸せの形を描く。」とビジョンらしきことを述べているが、抽象的との意見が出るのは必定である。

そこには、ビジョンをわかりやすく示せていない。ビジョンとは10年先、あるいは50年先の将来、どのような国になっているのか、目標とする国の姿である。

国のビジョンとは、日本国が世界の中で果たしている役割と立ち位置を示す日本国の姿と国民がどのような生活をしているかを示す国民が暮らす日本国の姿である。

そのために日本国は世界に対して、どのような働きかけをするのか、政治、経済面での施策を示す。ビジョンで示した国民生活を実現するために、政治、経済、財政施策をどのようにするのかを示すことが必要である。具体的には政治、経済、財政などの施策を工程表として提示し、そのプロセスを国民と共有化することが求められる。

これらのプロセスを実現するための、基本的な考え方が理念である。理念とビジョンを混同する場合があるが、このように体系的に関係を整理するとわかりやすい。

首相の施政方針演説では、理念が先に示されたので、ビジョンがわかりにくく、伝わりきれなかったと思われる。

ビジョンを簡潔に示し、ビジョンを実現する方策を時系列でプロセスを示し、実現するための基本的な考え方を理念として示すことで、国づくりの方針がわかりやすくなると考える。

これは、モノづくりの考え方と同じであり、新しいことを多くの人の協力を得ながら実現していく上では、特に重要なことであると考えている。